乳腺に発生する腫瘍です。良性のことも悪性のこともあり、同時に複数個できることもあります。雌にみられることがほとんどです。
犬では50%が良性で50%が悪性、猫では90%が悪性といわれています。そのため、犬と猫では対処方法も若干異なってきます。
治療としては犬猫ともに手術が第一選択です。抗癌剤は劇的には効きませんが、手術の補助的に使われることもあります。
犬の場合は良性の可能性もあるため、すぐに手術せずに経過を見ながら判断していくこともあります。急速に大きくなっていったり内側の筋肉に固着していたりする場合は悪性の可能性が高いため、早めに手術したほうがいいと考えられます。猫の場合はほぼ悪性のため、小さなしこりでも見つけたらなるべく早く手術することが勧められます。
手術方法については、猫では片側の乳腺全体の切除が一般的です。犬では腫瘍部分だけの切除や片側の乳腺全体の切除など、臨機応変に行われます。
悪性腫瘍の場合は高率にリンパ節や肺に転移します。そうなると予後が悪いです。肺転移の有無はX線検査で確認します。明らかに肺転移が認められる場合は手術をしても寿命を延ばすことができないため、一般的に手術は行われません。
腫瘍を治せるかどうかは早期発見にかかっています。初期の小さな段階では何も症状が出ないため、触らないと気が付きませんが、普段から気に掛けていれば発見することができるかもしれません。乳腺腫瘍は明らかにしこりのようなもののこともあれば、ざらざらとした感じで広範囲に腫れてくるようなもののこともありますので、注意が必要です。
乳腺腫瘍発生を予防するために若齢時の避妊手術が有効であることが知られています。犬では初回発情前が最も有効で、それ以後効果が小さくなっていきます。猫では半年齢ぐらいまでが最も有効です。乳腺腫瘍の予防を考えた場合は、遅くとも犬は2回目の発情前まで、猫は1歳になる前までに避妊手術をしたほうがいいでしょう。
乳腺の腫れに関しては偽妊娠や乳腺炎によるものの場合もありますが、判断が難しいかと思います。雌の犬猫の乳腺に異常を見付けたら、特に猫の場合は様子を見ずに動物病院に御相談ください。