急性嘔吐とは、突然吐くようになるという症状です。
主な原因としては、急性胃腸炎、急性膵炎、異物による腸閉塞や中毒、子宮蓄膿症、前立腺炎などが挙げられます。それ以外にもたくさんありますが、私はまずこのあたりを考えています。
診察においてはまず問診や身体検査を行い、対症療法を行うのか、各種検査を行うのかを判断します。一般的に、元気や食欲があるような場合は検査せずに対症療法を行い、元気や食欲がなかったり身体検査で重篤な疾患が疑われたりする場合には各種検査を勧めています。割合としては対症療法を選択する場合のほうが多いです。それで改善すれば治療終了で、もし改善しなければ検査をして原因を探していくことになります。
検査としては、血液検査、超音波検査、X線検査、糞便検査、尿検査、バリウム検査などが挙げられます。その都度優先順位を考えますが、一般的にはまず血液検査、次に超音波検査でしょうか。腸閉塞が疑われる場合にはX線やバリウム検査なども考慮します。
検査しない場合および検査をして異常がなかった場合は、急性胃腸炎と仮診断して対症療法を行います。私は、胃酸を抑える薬(H2ブロッカー)や、胃腸を動かして吐き気も抑える薬(メトクロプラミド)の投与を行うことが多いです。皮下輸液を行う場合もあります。
一過性の軽度の胃腸炎であればさほど心配はありません。原因がはっきりしなくてもあまり気にしなくていいと思います。原因は何ですか?とか、風邪ですか?とか聞かれますが、だいたいの場合はよくわかりません。季節の変わり目だからです、とか、ちょっと食べ過ぎたせいです、とかもっともらしく理由をつけることは可能ですが、不確かなことですので断言はしないようにしています。
重篤な疾患がある場合については、嘔吐を止めるだけでは治りません。腸閉塞や子宮蓄膿症では早急な手術が必要であり、急性膵炎では輸液などの集中治療が、前立腺炎では抗生物質の投与が必要となります。検査はいいから吐き気止めだけほしいと言って聞かない人もいますが、そのような場合は残念ながら責任が持てません。
吐き気止めの薬としては、メトクロプラミド、マロピタント、などの薬があります。メトクロプラミドは胃腸を動かす効果と吐き気を抑える効果があり、一般的にはこちらを使います。マロピタントは超強力な薬で、投与するとほぼ確実に吐かなくなるのですが、強力すぎるが故に対症療法として使うには問題があります。例えば腸閉塞があっても吐かなくなりますので、治ったと思って放置すると取り返しがつかないことになります。私は診断が確定するまではほとんど使っていません。
病院に連れていったほうがいいのかどうかという点に関しては、1回吐いただけで食欲があるのなら様子をみていいと思いますが、複数回吐いている場合に様子をみていいというお答えはできません。特に、動かない、元気がない、食欲がない、何か誤飲した形跡がある、といった場合にはすぐに受診することをお勧めします。