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犬猫の下痢

 犬猫の下痢の原因は様々です。胃腸疾患はもちろんですが、胃腸以外の疾患(膵臓、肝臓、内分泌疾患など)でも下痢になります。また、食事内容の変更、食べすぎ、ストレス、投薬などにより、特に病気がなくても下痢になることがあります。

 一般的には、元気や食欲があって下痢だけ急に起きたような場合はさほど心配ありません。一方で、元気や食欲が低下している場合、嘔吐やその他の症状がみられる場合、体重減少がみられる場合、下痢が数週間以上続いている場合などについては、何らかの病気が潜んでいる可能性が考えられます。また、仔犬や仔猫では下痢だけでも急速に状態が悪化することがあるため、原因によらず特に注意が必要となります。

 下痢をしている場合にはまず糞便検査を行います。ただ、一般的な糞便検査で下痢の原因を確定できることはそう多くはありません。寄生虫感染の検出が主な目的となりますが、それ以外の細菌・ウイルス感染やその他の原因までは判別できません。細菌についてはらせん菌や芽胞菌といったものが多く検出されることもありますが、それらの菌は下痢を呈していない動物からも検出されますし、病原性を持つ一部の特定菌種なのかどうかを見分けることはほぼ不可能ですので、参考程度として捉えたほうがいいと考えられます。細菌・ウイルス感染は培養や遺伝子検査により診断ができますが、軽症の場合には検査ばかり行うわけにもいきませんので状況に応じてということになります。

 当院では、状態がさほど悪くなく身体検査でも特に問題がみられない場合は糞便検査だけ行い、異常がなければ食事・生活環境の見直しや内服薬(整腸剤、下痢止めなど)の投与をしてもらうことが多いです。状態が悪い場合については血液検査、超音波検査、細菌・ウイルス感染の検査などを行って病気がないかどうかを調べていきます。それにより何らかの病気が見つかった場合は、下痢の対症療法だけでなく根本的な治療を行うことになります。

 動物病院では下痢で抗生物質を処方されることが多いかと思います。特定の抗生物質を飲ませると、原因によらずだいたいの下痢はすぐに治るのですが、実際のところ、食中毒を引き起こすような病原菌に感染して下痢になる症例はあまり多くはないと思われます。抗生物質で治るというのはおそらく、新たに感染した病原菌を死滅させているわけではなく、元から存在していて二次的に増えた悪玉菌を減少させているだけだと思われます。その点に関して抗生物質は整腸剤よりも即効性はありますが、使わなくても少し遅れて治ります。一過性の軽度の下痢で抗生物質まで使う必要があるかどうかは疑問ですので、当院では軽度の下痢では整腸剤や弱めの下痢止めを処方するようにしており、状態が悪かったりなかなか治らなかったりする場合には抗生物質の使用も考慮しています。

 下痢が長く続いている症例では食事変更(低アレルギー食、高繊維食など)、駆虫薬の投薬、抗生物質の投薬などの試験的治療を行うことがあります。診断は最終的には内視鏡検査となりますが、その前の段階の治療で改善するなら麻酔をかけてまで行う必要はないと考えられます。改善しない場合には内視鏡により腸炎や腫瘍などの診断を確定し、治療法を検討する必要があります。

 犬猫の下痢は心配ない場合から重大な病気の場合まで様々です。仔犬や仔猫の場合は早急に、また、成犬や成猫の場合でも元気がなかったり長く続いていたりする場合にはお早めにご来院ください。

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