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犬の副腎皮質機能亢進症

 腎臓の隣に副腎という内分泌器官があり、ステロイドホルモンを分泌しています。生きていくために不可欠なホルモンなのですが、何らかの原因によって多く分泌されすぎてしまうと全身に障害が出てきます。その状態が副腎皮質機能亢進症です。クッシング症候群とも呼ばれます。

 ステロイドホルモン自体は副腎から分泌されますが、その分泌量は下垂体という脳の近くにある器官によって調整されています。下垂体から副腎を活性化させるホルモンが分泌され、それに反応して副腎からステロイドホルモンが分泌されます。

 副腎皮質機能亢進症には2つのパターンがあります。1つは副腎腫瘍など、副腎自体に異常がある場合です。もう1つは下垂体に腫瘍などがあり、副腎を活性化させすぎている場合です。割合としては副腎の異常が10~20%、下垂体の異常が80~90%と言われています。

 症状は水を多く飲む、食欲が増える、お腹が出て太ったように見える、皮膚が脱毛するなどです。異常な飲水量が気になって来院される方が多いですが、基本的には活発になりますので、病気だと思われていない飼い主様も多いです。症状はステロイド剤を使用した時の副作用と同様ということになります。

 診断は主に血液検査、超音波検査、ホルモン検査によって行われます。血液検査で肝臓の数値やコレステロール値が高くなっている場合はこの疾患が疑われますので、超音波検査で左右の副腎を確認し、血液中のホルモン値を測定します。副腎の異常であるか下垂体の異常であるかは超音波検査で判断できることが多いです。

 原因が下垂体異常の場合、ステロイドホルモン合成を抑える内服薬による治療を行います。副腎腫瘍の場合は手術による摘出が第一選択ですが、内服薬による治療を行うこともあります。
 内服薬は基本的に生涯飲み続ける必要がありますが、高価なため、費用的な部分が問題となることがあります。薬が効きすぎると副作用が出てしまうことがあるため、慎重な体調管理も必要となります。

 治療しないとどうなるかということですが、多飲多尿や皮膚の症状が治まらない他、糖尿病、免疫力低下、血栓、突然死などが生じるリスクが高くなります。
治療した場合はそれらのリスクが低下しますが、完全に病気を治せるわけではありません。考え方としては、症状を抑えることを目的とした治療ということになります。

下垂体に腫瘍がある場合、一部の症例で視力や意識障害などの神経症状が出ることがあります。これは下垂体が腫大して脳を圧迫するためです。内服薬はホルモン合成を抑えるだけで下垂体の腫大を止められるわけではないため、治療をしてもしなくても生じ得ます。神経症状が出た場合の治療は残念ながら困難です。

 副腎皮質機能亢進症は典型的な症状を呈することが多い疾患です。治療するかどうかはまた別問題となりますが、疑わしい症状がある場合は御相談いただければと思います。

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