冬場に眼脂が出たりくしゃみをしたりといった風邪症状を呈する猫はかなり多いのではないかと思います。開院したばかりの当院にもすでに何頭か来院しています。一般的には猫風邪と総称され、大部分はヘルペスウイルス、カリシウイルスなどのウイルス感染に伴って発症します。仔猫で重篤な場合には死に至ったり、失明したりすることもあります。また、一度感染すると症状が改善した後も潜伏して生き残ることが多く、冬場や体力が落ちた時に活性化して症状を再燃させます。潜伏感染した後は直接命に関わることは少ないですが、完全に治すことも難しく、生涯にわたってうまく付き合っていく必要が出てきます。
治療は症状に応じて行われます。一般的には二次感染の治療としての抗菌剤点眼・点鼻・内服や、抗ウイルス薬であるインターフェロンの投与、ヘルペスウイルスを抑制するといわれているL-リジンの内服などが挙げられます。
ウイルス感染は混合ワクチン接種により予防でき、また、すでに感染している猫に対する接種については、治りはしないものの症状を軽くするといわれています。ただしワクチンによる予防効果は100%ではなく、飛沫感染により同居猫に移る可能性があります。よって理想的には感染した猫は隔離する必要があるのですが、現実的には難しいかもしれません。
ウイルスは歯肉口内炎の原因にもなりますので、口腔内の状態にも注意を払っていく必要があります。また、猫風邪を呈している猫は白血病ウイルスやエイズウイルスなどの感染機会もあったと考えられますので、一度検査をしておいたほうがいいでしょう。
猫風邪は外猫や以前外で暮らしていた猫にとって避けられない部分もありますが、なるべく感染機会を減らし、混合ワクチンによる予防を行ってあげてください。