入院のメリットは、「通院ではできない治療ができる(点滴、酸素吸入など)」「状態を見ながら対処できる(発作時、呼吸困難時など)」「飼い主さんの看病の負担が軽減される」などが挙げられます。一方でデメリットは、「動物にストレスがかかる」「費用が高くなる」「入院中に亡くなった場合に飼い主さんが看取ることができない」などでしょうか。
　 　
　 　
入院が必要かどうかは当然ながら動物の状態によります。重度の脱水や止まらない発作を家で治療できるはずがありません。ストレスがどうこうと言っていられる状況ではなく、治療するためには入院が必須です。ただ、どちらとも言えないような状態の場合もあります。入院すれば何でもすぐに治るわけではなく、通院と大差がない場合もあります。
　 　
　 　
当院は可能な限り通院を勧めるようにしておりますが、簡単に入院を勧める病院もあります。飼い主さんが判断するのは難しいですが、例えば、あまり状態が悪くもないのにたいした説明もなく検査入院しましょうとか勧めてくる病院は怪しいです。私はそれなりの根拠と目的がない限り入院を勧めませんので、軽い感じで入院させる病院は信用しておりません。
　 　
　 　
入院といえば、夜間にどのような管理体制になっているかというのは気になるところだと思います。獣医師が泊まりがけで看るのが当たり前だと思われる方もいらっしゃるでしょうけれども、そういうことはありません。獣医師が泊まりがけで看ると夜間の残業代だけで2万円以上かかりますから、入院費が1日5000円とか10000円とかなのであればそのような入院管理は想定されていないということになります。常に10頭くらい入院している病院であれば宿直を置くことも可能でしょうけれども、ほとんどの病院では不可能です。
　 　
　 　
入院治療の際には静脈点滴をすることが多いと思いますが、動物はケージ内で動きますので点滴が詰まることがよくあります。夜間に人がいなければ点滴が詰まっても翌朝まで放置ということになり、入院治療の意味がなくなってしまいます。私はそれが嫌なので、点滴が必須でない場合は通院で対応し、点滴が必須な場合には入院させて泊りがけで看るようにしております。
　 　
　 　
一般的には、夜間は全く関知しないという病院が多いと思われますが、見回りをしたり泊まりがけで看たりする病院も存在します。病院によって方針は様々ですし、入院費も様々です。小さな病院は人も少ないしきちんと看ていないだろうと思われがちですが、むしろ逆のような気がします。労働環境がしっかりしている大きな病院のほうが夜間に誰もいない可能性が高いです。
　　
　　
「従業員に正当な手当を出して夜間の看護を行い、飼い主さんに相応の請求をする」というのが本来は正しいのでしょうけれども、診療費高騰や人材不足の問題がありますので現実的には難しいです。動物病院業界は、以前はブラックな労働環境が蔓延していましたが、近年は時代の流れで変わってきています。ただしその影響で、夜間も看てくれる病院が減少していることは間違いないでしょう。
　 　
　 　
従業員にサービス残業させる病院は法的に問題がありますが、当院のように院長が自らの意志で残業している場合は問題はありません。健全ではないけど動物の治療のためにはしょうがないといったところでしょうか。ただ、そのような病院も最近は少ないと思います。院長にもプライベートがありますからしょうがないですね。
　 　
　　
ここから先は当院の話ですが、私は入院がいればだいたい泊まっています。ただ、寝ずに看ているわけではありませんし、たまに家に帰る時もあります。残業代を入院費に上乗せしたりはしておりません。
　　
他院で入院不可と言われて転院してくる方はけっこういらっしゃいます(主に江戸川区の東のほうから)。糖尿病や尿道閉塞などの重症患者が多いです。私が診られる病気であれば基本的には受け入れております。
　　
夜間は私一人しかおりませんので、処置や検査など何でもできるわけではありません。24時間病院と同じようには考えないでください。多くを求める方や態度が悪い方はお断りしております。
　　
このように入院治療をしていると、ほとんどの飼い主さんには感謝されるのですが、稀にそうではない方もいらっしゃいます（過去に2〜3人くらい）。深夜とか早朝にも対応し、低くないレベルの治療を高くない費用で行っているのですが、それが当たり前だと考える方がいらっしゃるようです。お金の問題じゃないみたいなことを言ってきたりもします。お金が問題ではなく100万くらい余裕で払える方は、当院ではなく二次病院や24時間病院に行ってください。当院は、費用を抑えながらそれでも治療したいという方に合っていると思います。
　　
入院中は、ケージ内でタオルとペットシーツを敷いていますが、尿や便で体が汚れることはあります。もちろん拭きはしますけれども、毛に付いた汚れを水で洗ったりまではしておりません。退院時にはシャンプーをしております（怒って不可能な猫以外）。入院中もその都度水で洗って常にきれいにしてほしいという方は、当院ではなく他院に行ってください。過去にクレームをつけてきた人が「動物への愛情がない、きれいにしていないことを他の患者に周知しろ」とおっしゃっていましたので、ここに周知しておきます。